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疾患解説 網膜硝子体手術|眼科

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網膜硝子体手術(もうまくしょうしたいしゅじゅつ)

硝子体は眼球内、水晶体と呼ばれるレンズの奥にある無色透明のゼリー状の物質のことです。カメラのフィルムにあたる網膜という神経がその奥に膜状に眼球の内側に貼り付いています。硝子体に混濁など病気があると光が網膜に届かず、よく見えなくなります。また、網膜に病気があっても光でできた画像を受け取れなくなるために視力が落ちます。硝子体手術は硝子体を取り除き、網膜の治療をする手術です。

当日の術前から麻酔まで

手術前には何回か散瞳剤を点眼します。手術は局所麻酔、もしくは全身麻酔にて行なわれ、手術の開始から終了までは40分から2時間程度です。局所麻酔の場合には点眼麻酔後に目の消毒をします。麻酔後ですが消毒液は目に染みます。その後、清潔な布をお顔全体にかけて皮膚の細菌などが手術する目に飛ばないようにします。瞼を器械で開けて、麻酔薬を目の周囲に注入します。局所麻酔をしても、軽い疼痛(重い感覚)、触った感じ、冷たかったり水がかかる感じは残ります。強く痛む時には麻酔の追加をしますので声を掛けて下さい。麻酔は眼球にしか効きませんので皮膚の感覚は残ります。全身麻酔の時には、眠っている間に全てしますので、感覚はありません。

白内障手術について

手術を確実に行なうため、白内障手術を同時に行なうことが有ります。50歳以上では、術後に急速に白内障が進行して視力が低下し、また診察の妨げになることが多いため、白内障の手術を同時に行ないます。しかし、この白内障の手術は硝子体手術をより確実にするために行なうもので、一般の白内障手術と異なり、視力の向上を保証するものではありません。

硝子体手術について

強膜(白目)に3~4箇所、硝子体腔に手術器具を入れるための穴を作ります。穴は手術中に眼球の形態を保つため灌流液を入れるところ、眼内を照らす照明を入れるところとして1・2ヵ所、硝子体切除用のカッターやレーザー、鉗子や剪刀などを入れるところとして使います。これらの器具を使用して、硝子体を切除してから網膜の処置をします。

手術中、場合により行なわれる主な手技

透明な硝子体を見えるようにしたり、眼内の膜を見えるようにしたり、術後の炎症を抑えるために、懸濁ステロイド剤を使用します。
眼内の膜が見えにくい時には染色の薬剤を使用します。
網膜を安定化させるために、パーフルオロカーボンという液体を使用する場合が有ります。

網膜剥離、黄斑円孔、網膜下出血などでは特殊ガスを眼内に充填して手術を終了します。浮力で網膜を眼球壁に押さえつけるためのもので,術後はガスが少なくなるまで俯きの姿勢やどちらかの横向きになっておく必要があります。眼内にガスがある間は仰向け(上向き)になると緑内障、白内障、角膜障害を起こす可能性があるため、仰向けの体勢を避ける必要があります。就寝中は枕やクッションなどを利用して特に気をつけて下さい。

難治性の網膜剥離等で眼内専用の医療用シリコンオイルを眼内に充填して手術を終了することが有ります。シリコンオイルはガスや空気と異なり自然吸収はされませんので病気が落ち着いた頃に除去する手術が必要になります。ガスと同様、術後しばらくは仰向けの体勢を避ける必要があります。

硝子体手術に伴う合併症

重度の合併症

術後感染症:術後に創口から細菌が入って感染を起こし、眼内で炎症を起こすことが有ります。抗生物質で治療しますが、著しい場合には手術が必要です。発症すると治療をしても視力は良くならないことがほとんどです。

脈絡膜出血(駆逐性出血):手術中や術後早期に網膜の下にある脈絡膜から大出血が起きることが有ります。この合併症は非常にまれですが、一旦発症すると止めることができませんので、手術中であれば手術を中止せざるを得ません。起こすと視野が非常に狭くなり視力は良くならないことがほとんどです。最終的に失明に至ることもあります。

血行障害:動脈硬化の強い方の場合、手術中や手術後に網膜や視神経の血液循環が悪くなり、視力や視野が障害されることがあります。非常にまれですが動脈が閉塞すると突然失明する可能性があります。

中等度の合併症

硝子体出血:術後、硝子体腔に出血を起こすことが有ります。糖尿病などで血管がもろくなっている場合や、高血圧、抗凝固療法を行なっている場合に多い合併症です。病気や全身状態にもよりますが、1ヶ月程度待ってもひかない場合には出血を洗う手術を行ないます。

網膜剥離:術中や術後に網膜剥離を発症する可能性があり、手術中に発症した場合にはそのまま網膜剥離の手術に移行します。術後に発症した場合には網膜を眼球壁に復位させるために再手術が必要になります。増殖性硝子体網膜症という難治性の網膜剥離に進行する事があります。

網膜前線維増殖:術後に網膜表面に線維性の膜が張って視力が低下することが有ります。程度により、膜を取り除く手術が必要になります。

視野障害:眼内を空気やガスで置き換えたり薬剤を注入することに関連して網膜が障害され、視野が狭くなる、見づらい場所が生じる、等の障害が生じる可能性が有ります。

軽度の合併症

角膜上皮障害:手術時には瞼を閉じることができないため、角膜(黒目)の表面が荒れて傷付く事があります。通常は1-2週間程度で自然に回復しますが、糖尿病などで傷の治りが悪い場合には長引くことが有り、点眼薬や軟膏で治療します。

緑内障(高眼圧):術後に一過性に眼圧が高くなることが有ります。主に点滴や内服薬、点眼薬などで治療しますが、長引く時には緑内障手術を行なう場合も有ります。また、手術後数年で徐々に眼圧が上昇することがあり、まずは主に点眼薬で治療します。

その他

球後出血:局所麻酔薬を注入する際に眼球周囲に著明な出血を起こすことがあり、手術が延期になることが有ります。

白内障:硝子体手術後に白内障が進行することが言われており、数年後には白内障手術を検討する程度の視力低下が起こる可能性があります。そのため、概ね50歳代以上の患者様の場合には硝子体手術と同時に白内障手術を検討します。また、白内障手術をせずに硝子体腔にガスを入れる手術をした場合には「ガス白内障」を発症します。可逆性のことも有りますが、不可逆性になり、別途、白内障手術が必要になる可能性が有ります。

血管新生緑内障:術前から網膜血管の閉塞が強い場合、特に糖尿病網膜症などの術後に血管新生による難治性の緑内障になることが有ります。点眼薬や内服薬などで眼圧が下降しない場合には手術による眼圧下降が必要になります。

水疱性角膜症:角膜の病気や、過去の手術などによって角膜内面の内皮細胞が少なくなっている場合、手術後に角膜が浮腫で混濁することで視力が低下し、角膜移植が必要になる場合があります。

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