白内障(はくないしょう)
1. 白内障とは
白内障とは眼の中のレンズの役割をしている水晶体の中身が白く濁ってくることです。
主に加齢による変化ですが、全身の病気(アトピー性皮膚炎、重症糖尿病など)や外傷などで、若くして白内障になることもあります。カメラのレンズに指紋がつくと映りが悪くなってしまうのと同じで、濁ったレンズでは光がよく通りませんし焦点も合いにくいため、きれいな画像を網膜に映すことができなくなります。まぶしい、かすんで見える、ピントがぼける、見えにくいなどの症状が出ます。混濁の状態によっては手元だけ見えにくいということもあります。
タンパク質の性状が変化することで発症しますから、良くする治療法としては手術しかありません。
眼鏡で視力を矯正しても白内障の症状による不便さを感じて、それを取り除きたいと感じる時には治療を受けると良いでしょう。
白内障手術について
白内障手術の目的は濁った水晶体(レンズ)をきれいな人工レンズと取り換えて、再びきれいな画像が網膜に映るようにすることです。
手術室に入る前に何回か散瞳剤を点眼し、手術の時に白内障を良く観察できるようにします。術後の感染予防のため私服で手術室には入れません。手術着に着替えます。手術中の体調によって点滴や注射薬を使用できるように、点滴の針を留置しておきます。
手術室に入ったら、麻酔の点眼薬を点眼し、目の周りの皮膚と目の中を消毒します。清潔な布をお顔にかぶせ、消毒していないところの菌が眼内に入らないように処置します。
瞼を器具で開けて手術開始です。
まず白目と黒目のさかいに切開を入れます。水晶体は透明な袋状の膜で覆われており、中身だけが濁っていますので水晶体の袋を円形に切り取り、中身を超音波で砕いて吸引、もしくは水晶体の中身を丸ごと取り出します。そして、残した袋に人工眼内レンズを固定します。
手術は原則として局所麻酔で行います。
術後の見え方と眼鏡について
手術後の視力は、白内障のほかに眼の病気がなければ手術により良好な視力の回復が期待できます。しかし、白内障のほかに病気があった場合は、思いのほか視力が出ないことがあります。術前は目の奥の診察も白内障を通して行うため、手術後に新たに病気が見つかることもあり、術後、それらの病気は進行することもあります。
保険診療の範囲で行える手術では、眼内レンズは単焦点レンズというレンズを眼内に挿入します。60~65歳程度の老視が残ります。
昔から遠くが良く見えて、近用眼鏡(老眼鏡)や遠近両用眼鏡を使い慣れている場合には、手術後も、眼鏡をかけないで遠くが割合見えて手元は近用眼鏡をかけた状態で術前より良く見える、という状態にすると生活が変わらず慣れやすいと思われます。
逆に、普段から眼鏡をかけて生活し、眼鏡を外せば手元が見えていた、という近視の方は、術後も眼鏡をかけずに手元が見えた方がストレスが少ないと言われています。しかし、ご希望により、裸眼で見える範囲を変えることが可能ですので、実際に手術を具体的に予約した時にご相談ください。
術後は術前の眼鏡が合わなくなり、また、眼鏡をかけていなかった方でも、眼鏡が必要になります。眼鏡の度数が安定するのに1~3ヵ月かかります。眼鏡を替える時期については医師が判断しますので、ご相談ください。
主な合併症について
麻酔の薬による血圧低下や脈が遅くなるなどのショック症状が起こることがあります。この場合は手術室で適切な処置を行います。
術後に細菌感染を起こし眼の中で炎症を起こすことがあります。抗生物質で治療しますが、著しい時は手術が必要です。視力がかなり落ちる可能性があります。
●駆遂性出血
手術中に眼内に大出血が起こることがごくまれにあります。この場合は創を速やかに閉じ手術を中止します。また、術後に発症することがあります。
●緑内障
術後、目の内圧(眼圧)が上昇してしまうことがあります。主に点眼薬や内服薬、点滴などで対処します。
●水晶体の落下
手術中に水晶体の袋が破れたり、水晶体の中身が袋の後ろに落ちてしまうことがあります。袋の破けが大きい時は眼内レンズを挿入しないこともあります。これらの場合は日を改めて再手術が必要になることもあり、同じ日に眼内レンズが入らない可能性があります。
●後発白内障
白内障の手術後、残した水晶体の袋が濁ってくるために数ヵ月~数年してからまた「目がかすむ」などの症状が出てくることがあります。外来でレーザーを使って濁りを取ることができます。
●水泡性角膜症
角膜(黒目)の内皮細胞数が少ないと術後に角膜が不可逆的にむくんで、視力を落とすことがあります。治療は角膜移植をすることになります。
●その他
網膜剥離(網膜がやぶけ、目の壁から剥がれること)や、目の中に入れた眼内レンズが傾いたり、網膜がむくんで見えにくくなることがあります。それぞれの原因に合わせて手術などの治療が必要になることがあります。大きな合併症を起こすと失明することもあります。