不整脈とカテーテル
アブレーション
不整脈とカテーテルアブレーション②
心筋を焼く!カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーション治療とは日本語では心筋焼灼術(しんきんしょうしゃくじゅつ)といわれています。カテーテルというボールペンの芯くらいの太さの細長い電線を、不整脈の原因となる心筋へ当てて、高周波という電子レンジで加熱する仕組みでカテーテルの先端を約60度まで加熱し、心臓の筋肉の一部にやけどを作ることによって心筋を変性させ、電気の通る性質をなくしてしまい、不整脈を起こさなくする治療法です。
心房細動に対するカテーテルアブレーション治療は、傷んだ心筋から出る異常な電気刺激が原因で起きると言われています。様々な研究から、心房細動の原因となる異常な電気刺激は、ほとんどが肺から左心房へ入り込む肺静脈という血管が原因となることが知られています。そのため、肺静脈と心臓を電気的に遮断する方法が有効と考えられています。
▲左心房に流れ込む4本の肺静脈のまわりをアブレーションしていきます。(左図)/赤丸の部分が、アブレーション(焼灼)した部分です。(右写真)
心房細動の発作が起き始めてすぐの場合には、傷んだ心筋がそれほど多くないため、この肺静脈隔離法で発作が起きなくなると言われています。しかし、心房細動が長く続くようになると、心房細動自体によって心臓の筋肉に障害が起き、障害心筋が多くなるため、治療が難しくなると言われています。その場合は、肺静脈からの電気を遮断するだけでなく、ほかの傷んだ心筋を探して治療する必要が出てきますので、治療が難しくなり、治療成績も悪くなります。
肺静脈と左心房間の電気的な遮断の治療を行うに当たり、左心房内にカテーテルを挿入しなければならないのですが、通常、右心房と左心房の間に針を刺して穴をあけて、そこからカテーテルを入れることになります。この操作を安全に行うために、心臓内に超音波装置を挿入するなど、複雑な操作が必要となります。
左心房の形態や肺静脈の状態は、個人差が大きいですので、事前に情報があると治療の助けになります。そのため、最近では、治療前に造影CT検査を受けていただき、左心房の形態と肺静脈の状態を調べておきます。
- 肺静脈と心房細動
- なぜ肺静脈と心臓の接続部分が心房細動の原因となるのか? この部分は、心臓の筋肉層から血管壁へと移行する部分なので、傷みやすいのが原因ではないかと考えられます。
カテーテルアブレーションの実際
心房細動の治療を行う際には、局部麻酔によって右足の付け根から静脈に3本カテーテル挿入用のシースという管を挿入します ・・・①
動脈には検査中の血圧監視用のシースを挿入します。 ・・・②
首からも静脈にシースを挿入します。そして、血液を固まりにくくするヘパリンという薬を点滴から入れます。首からは左心房に向けて電極カテーテルを挿入します ・・・③
またアブレーションの熱による食道穿孔の合併症予防に鼻から食道へと温度センサーを挿入します ・・・④
①の右足の付け根の3本のシースには、心臓内をエコーで確認する装置、肺静脈の電位を見るためのカテーテル、そして治療用カテーテルを挿入します。これにより治療を行います。
カテーテルにて左心房にやけどを作っていくわけですが、その時にはかなりの痛みを伴うと言われています。そのため、治療の時には軽い全身麻酔をかけて行います。
治療の際に心房細動の誘発を行ったりもします。肺静脈の電気的隔離が完成した後にも心房細動が止まらないことがあります。その時には、全身麻酔下に電気ショックを行い、心房細動を停止させることがあります。
検査、治療終了後はカテーテル、シースを抜いて固定して終了となります。シースを抜いたときは、出血しないようにしっかり手で圧迫して止血を行います。足の付け根は動脈を刺しているので、約3時間ビンを使用し、強いテープでしっかりと固定します。その間は、ビンがずれて、再出血してしまう恐れがありますので足は動かさないようにします。3時間後にテープをはずし、止血を確認します。特に問題がないようでしたら、歩行可能となります。
▲左心房に入っている実際のカテーテル類(食道温度センサーは心臓の背部にある食道に入っています)