- 心不全を知って体調管理に役立てましょう(2023年3月23日)
- 当院における橈骨遠位端骨折のハンドセラピィ(2023年2月15日)
- 第13回おぎくぼリハビリの会を開催いたしました!(2022年12月26日)
- 立ち上がる時のポイント(2022年12月13日)
- 食事の形態について(2022年11月02日)
- 寝たきりにならないために—大腿骨頚部骨折のリハビリテーション(2022年10月17日)
- 熱中症のリスクと予防について(2022年9月2日)
- ばね指には「ストレッチ」が有効です(2022年8月10日)
- 起き上がり介助方法のポイント(2022年6月28日)
- 食事介助の重要性を伝える研修(2022年5月31日)
- 意外と知らない? 杖の使い方(2022年4月30日)
- 2021年度一覧
-
- ベッドの上で人を移動させるには(2022年3月31日)
- 手術後のリスクを減らす「胸腹部の手術前リハビリテーション」(2022年2月28日)
- 心臓リハにおける有酸素運動、無酸素運動(2022年1月28日)
- 当院における母指CM関節症のハンドセラピィ(2021年12月28日)
- 屋内に潜む転倒の危険性(2021年11月30日)
- 失語症の評価と訓練(2021年10月29日)
- 脳卒中後の“失語症”に対するアプローチ(2021年9月30日)
- 膝の手術のリハビリテーション ―高位脛骨骨切り術編―(2021年8月31日)
- 膝の手術のリハビリテーション ―人工関節置換術編―(2021年7月31日)
- 2型糖尿病と運動療法について(2021年6月29日)
- 循環器疾患のリハビリって、どんなことをするの?(2021年5月31日)
- 当院での手根管症候群へのハンドセラピィ(2021年4月28日)
- 2020年度一覧
-
- 訪問リハビリテーション室、開設しました(2021年3月25日)
- なんと! これがリハビリに?(2021年2月27日)
- 嚥下機能の低下が招く誤嚥性肺炎~誤嚥性肺炎を予防しよう~(2021年1月29日)
- 冬場の運動の注意点~心疾患をお持ちの方へ~(2020年12月25日)
- 外出自粛で陥りやすい?「フレイル」を防ぐ(2020年11月30日)
- 血友病のリハビリテーション(2020年10月29日)
- 腰の手術前後のリハビリテーション(2020年9月30日)
- 「肺炎」のリハビリで気をつけていること(2020年8月18日)
- 完全オーダーメイド! スプリント療法(2020年7月15日)
- 心臓リハビリテーションのご紹介(2020年6月25日)
- カラダを動かしましょう!ヒットトレーニング編(2020年5月28日)
- 外出制限の中、ご自宅でできる簡単な運動(2020年4月30日)
2023年3月23日心不全を知って体調管理に役立てましょう
こんにちは、内部障害チーム*1です。
みなさん、心不全という病気をご存じでしょうか。私たち内部障害チームがリハビリを担当する患者さんの中で、実は心不全の患者さんが最も多くを占めています。
「心不全の患者さんが元気に退院していただくこと」がリハビリの目標ですが、患者さんご自身が心不全を理解した上で、ご自身で体調管理を行っていただき、退院後も長くお元気に過ごしていただくことも重要だと考えています。
入院中は、医師・看護師・薬剤師・栄養士・リハビリ等、さまざまな職種が協力しながらこの目標を達成できるように努めています。
今回は、心不全とはどのような病気か、わかりやすくご説明します。
心不全という病気についての理解や、体調管理に役立てていただければと思います。
*1 内部障害チーム:循環器・心臓血管外科・内科・外科・泌尿器科リハビリ等の内部障害を全般的に対応しているチームです。
心不全とは?
心不全は、心臓のポンプ機能が低下し全身に血液が送れず、様々な症状が出現する状態のことを
言います。心臓の機能が低下したために、運動機能が低下し、最終的に生命を縮めてしまう可能性があります。
治療により症状の改善が期待できますが、悪化と軽快を繰り返して進行していくこともあります。
様々ありますが、代表的な原因となる病気を挙げていきます。
・冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)
冠動脈とは心臓に酸素と栄養を送る血管です。冠動脈の流れが悪くなる狭心症や、冠動脈の流れが途絶える心筋梗塞になると、心臓の筋肉に十分な酸素や栄養が心臓に届かず、心臓のポンプ機能が低下します。
・弁膜症
心臓の中には4つの弁があり、血液の流れが一方通行になるように調節しています。この弁が硬くなって開きが悪くなり血液が流れにくくなってしまう病気(狭窄症)や、弁が閉まらなくなり血液が逆流してしまう病気(閉鎖不全症)が弁膜症です。狭窄症、閉鎖不全症どちらも全身に十分に血液が送れない状態になります。4つの弁のうち、異常が起こりやすいのは、全身に血液を送り出すために常に大きな力がかかっている心臓の左側にある僧帽弁と大動脈弁です。
・高血圧
血圧が高い状態が続くと、高い圧力に対応するために血管の壁が厚く硬くなってきます。心臓から血液を送り出すために絶えず強い力が必要となり、徐々に心臓の筋肉が厚くなり心肥大を起こします。この状態が続くと、心臓が疲労して心臓のポンプ機能低下を起こしてしまいます。
・不整脈
心臓は本来一定のリズムで全身に血液を送っています。不整脈は、このリズムが不規則になったり、過度に速くなったり遅くなったりすることで、心臓のポンプ機能の低下を起こしてしまいます。
・心筋症
心筋症とは心臓の筋肉の病気です。徐々に心臓の壁が薄くなって拡大してくる拡張型心筋症と、心臓の壁が厚くなる肥大型心筋症があります。
原因はいまだ明かされていませんが、遺伝的背景、免疫異常、炎症などが関係していると言われています。
心不全の症状とは?
高血圧や不整脈、他の心臓病をお持ちの方でも症状が軽く、心不全の状態だと気付かないことが多いと言われています。次の症状に心当たりはありませんか?
心臓の機能が低下していると、通常息切れを感じないような軽い動作や運動で息切れが出現します。
また息切れのせいで疲れやすくなり、以前より歩くのが遅くなる、家事が疎かになってしまうこと等があります。
このような症状は、加齢によるものだけではないかもしれません。
・急なむくみ(浮腫)や体重の増加
心臓のポンプ機能が低下してしまうと、血液の流れがスムーズにいかなくなります。その結果、血液の量を増やすことで代償しようとします。
身体に血液をたくさん溜め込むようになり、全身の血管に血液が滞り、うっ滞すると浮腫みを引き起こします。
また、心臓から十分な血液が送り出せず、腎臓に流れる血液が少なくなると尿の量が減り、体内に水分が貯留します。
足の甲やすねの部分が浮腫んできたり、体重が増えてしまうことがあります。
急な浮腫や体重の増加(前日より1~2㎏の増加)の際は、心不全が原因で起こっているかもしれません。
・夜間の呼吸苦
心臓と肺は血管で繋がっています。心臓のポンプ機能が低下した状態では、心臓や肺の中で血液の流れが滞ってしまい、呼吸が苦しくなります。
平らに寝ていると血液が下半身から心臓に戻る際に重力の影響を受けないため、心臓に戻ってくる血液の量が多くなり、呼吸苦を起こします。
就寝2~3時間後に突然苦しくなって目覚めてしまいます。このため上半身を起こして心臓に戻る血液量を減らして呼吸を楽にしようとします。
自分で症状を確認しましょう!以下に当てはまる症状にチェックしてください!
- 簡単に息切れしてしまう。
- 歩くのが遅くなった。
- 体重が前日より1-2kg以上増加している。
- 足が浮腫んでいる。
- 寝ている時に寝苦しくなり起き上がるが、しばらく座っていると苦しくなくなる。
チェックが1つでもあれば心不全の可能性があるため、近くの病院・診療所に相談しましょう!
身体の見方.1
普段何気なく行っている家事動作や買い物などで息切れを感じることがあります。
疲れやすく、いつも通っている場所に行くのにかなり時間がかかってしまいます。
また下記のような指標もあります。
※やまぐち呼吸器内科・皮膚科クリニックHPより引用
医療現場でも使われているものです。参考にして下さい!
身体の見方.2
朝起きて、トイレに行った後、朝食前に測定しましょう。毎日同じ時間帯に測定するようにしましょう。
身体の見方.3
足の甲や足の脛の部分を10秒程度押します。そのままへこみ、痕が残ってしまうかどうかみます。
心不全による浮腫の特徴は下肢の浮腫です!
まとめ
心不全は悪化と軽快を繰り返すことがあり、長く向き合っていかなければいけない病気です。
体調の悪い時だけでなく、毎日ご自身で体調管理をすることで心不全悪化のサインを見逃さないようにしましょう。
今まで症状のない方でも、心不全の原因となる病気をお持ちの方は、心不全症状の出現に注意してください。
そして、心不全かしら?と疑った場合は、早めに相談や受診をして、悪化させないように元気に過ごしていきましょう。
2023年2月15日当院における橈骨遠位端骨折のハンドセラピィ
みなさん、こんにちは。作業療法チームです。
当院には、手外科センターがあり、手のケガや病気の患者さんの治療を行っています。
私たち作業療法士も手外科専門医と連携し、手のケガ・病気の患者さんに対するリハビリテーション(ハンドセラピィ)を提供しています。
今回は冬の時期に多い橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)について、ご紹介いたします。
橈骨遠位端骨折とは
高齢者が手をついて転倒した際に、前腕の2本の骨(橈骨:とうこつ、尺骨:しゃっこつ)のうち橈骨が手首周辺で骨折することを指します(図1)。
図1:外傷のない右手首正面のレントゲン写真(左)、左橈骨遠位端骨折のレントゲン写真(右)
尺骨も同時に骨折することが多く、また高齢者だけでなく小児や若年者でも交通事故や転落、スポーツなどで生じることもあります。
骨折の形態によって固有の名称が付いています(図2-A~C)。
図2-A:外傷のない手首側面のレントゲン写真
図2-B:Smith骨折や掌側Barton骨折(骨折した骨が掌側にずれている)
図2-C:Colles骨折(骨折した骨が背側にずれている)
症状
手首に強い痛みや腫れ、熱感が生じます。時には変形も見られます。
合併症として、手根管症候群(親指~薬指の半分に痺れや物をつまめないなどの症状。詳細は2021年4月28日付のブログ参照)や、少し時間が経過してから親指の第一関節を動かす腱が切れることもあります。
治療 および リハビリテーション
受傷4~6週間は患部をギプスまたはギプスシーネ固定(以下ギプス固定)して安静を図ります。
主治医の判断でギプス固定が外れたら、スプリント*(図3参照)を使用しながら手首の運動を開始します。
骨癒合が得られた状態で荷重練習や筋力強化を図り生活復帰していきます。
図3:当院で作成している「コックアップスプリント」です。ギプス固定より簡易的に固定ができ、ご自身で取り外しができます。
*:スプリントとは、簡単に説明すると患部を固定するものです。用途は様々ありますが、橈骨遠位端骨折の場合は患部の保護目的に作成することが多いです。
骨折が関節内まで及んでいる場合や転位(ずれ)が強い場合は手術適応となります。
手術方法としては、骨折部を整復(骨折した箇所を正しい位置に戻す)してロッキングプレート(図4)という金具を使って固定する術式が主流となっています。
骨折型や年齢などによって、ワイヤー単独固定あるいはプレートとの併用、創外固定や人工骨の追加など、臨機応変に対応します。
図4:ロッキングプレート(このプレートで骨折部を固定します)
当院の術後リハビリは、おおよそ下記の通りで進めていきます。
骨折を生じた場合、損傷されるのは骨だけではありません。
レントゲンでわかる骨に目を奪われがちですが、実際はその周辺組織(骨膜、靭帯など)も同時に損傷されています。
合併損傷がある程度修復するまでの安静保持のため、また手術侵襲による疼痛や腫脹を軽減するため、当院では術後一定期間のギプス固定を行っています。
ギプス固定した状態ですが、手術直後から主治医の指示の下にリハビリを行います!!!
時期 | リハビリ内容 | 日常生活 |
---|---|---|
手術施行後 | ・ギプス固定中。固定中も、肩と指を積極的に動かしていきます | ・固定部位は濡らさないように注意ください ・なるべく手は心臓より挙上してください |
手術2~3週間後 | ・ギプス固定除去後、スプリント(図3)を作成します。 スプリントは疼痛が強い時の他、外出時や夜間時などに装着します ・手首を動かす練習を開始します |
・箸や洗顔、洗髪など負荷がかからない両手動作から始めます |
手術2ヵ月後 | ・握力、つまむ力を入れる練習を積極的に行っていきます | ・軽い力仕事を始めます |
骨癒合 | ・荷重訓練を開始します | ・制限なし |
~手のリハビリに関して、今後もOTチームは頑張ります!~
2022年12月26日第13回おぎくぼリハビリの会を開催いたしました!
こんにちは。リハビリテーション室です。
2022年11月16日(水)に第13回おぎくぼリハビリの会を開催いたしました。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、2019年11月15日に第12回を開催して以来、ちょうど3年ぶりの開催となりました。
とはいえ、以前のように当院レストランを会場にすることはできず、webでの開催でしたが、外部から18名の方にご参加いただきました。
今回は「四肢骨関節外傷の診かた」をテーマに整形外科部長/リハビリテーション科部長 岡﨑医師より「骨折画像の診かた ~上肢を中心とした総論~」、整形外科水間医師より「大腿部近位部骨折の診かた ~診断・治療・リハビリ~」について講演して頂きました。
当院リハビリスタッフも参加し非常に有意義な時間になりました。
地域のリハビリテーションに関わる医療者にとって有用な会になるよう、患者様に還元できるような知識や手技を今後も継続して発信していきたいと思います。
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症例発表する岡﨑整形外科部長
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司会進行する織田副科長(左)、中野主任(右)
2022年12月13日立ち上がる時のポイント
こんにちは。訪問リハビリテーション室です。
訪問リハビリでご自宅に伺っていると、利用者様のご家族様から「どこを持って起き上がりを介助するのか」や「歩くときにはどのように手伝えばいいのか」 といった“体位変換や移動などの介助方法”について質問されることがあります。
3月のリハビリ室ブログで”ベッド上で移動させる際のポイント”を、6月のリハビリ室ブログで”起き上がりの介助方法”をご紹介しました。
今回は”立ち上がる時”の ポイントをご紹介いたします。
人間にとって「立つ」という動作は、”立っている姿勢を保持する”ことも大変ですが、”立ち上がる時”の方が瞬発的な筋力が必要となるため困難なことが多いです。
そこで、”座っている姿勢”から立っている姿勢”になるまでのポイントをお話します。
立ち上がる時のポイントは大きく分けて2つです。
①立つ前の座っている姿勢
②立ち上がる時の重心移動
この2つを意識できると立ち上がる動作が少し楽になると思います。
✓骨盤 :できるだけ骨盤を立てて座りましょう
✓足の位置 :足底は地面に接地、可能であれば膝より内側に、体に近い位置に置きましょう
✓背中 :背もたれから離して、骨盤の真上にあると良いです
✓骨盤 :後ろに倒れないようにしましょう
✓重心 :おへそを前に出すようなイメージで前方に移動させます
よく「立つときはお辞儀をしながら立ちましょう」と言われることがあると思いますが、背中だけを丸めて頭を下げても重心を前に移動できず、効果的ではありません。
お辞儀をする際は骨盤を立ててから頭を下げるようにすると良いと思います。
イメージとして自分の斜め上の物を取ろうとするとその延長で立ちやすくなることもあります。
また、手すりなども少し遠くで掴むと立ち上がりやすくなると思います。
参考にしてみてください。
2022年11月02日食事の形態について
こんにちは。言語聴覚療法チームです。
暑い夏が終わり、涼しい秋の季節になってきました。
みなさんは秋と言えば何を思い浮かべますか?
読書の秋やスポーツの秋、芸術の秋と色々な秋がありますが、言語聴覚士としては、やはり「食欲の秋」ですね。
そこで今回は、食欲の秋にちなんで当院の食事の一部をご紹介させて頂ければと思います。
言語聴覚士は、飲み込みのリハビリ(摂食嚥下リハビリテーション)を行っており、飲み込みにくい・食べにくい方に対して、適切な食事の形態(以下、食形態)を選定し提供させて頂いております。
では、具体的にどのような食形態があるでしょうか。
ここでは主食についてご説明します。
1つ目は米飯です。米飯は飲み込みの機能(以下、嚥下機能)が問題なく保たれている方に提供しております。おそらく、一番馴染みのある形かと思われます。
2つ目は軟飯です。軟飯は米飯と同様に比較的嚥下機能が保たれている方に提供しておりますが、主に硬いものが食べにくい方に提供することが多いです。
3つ目は粥です。粥は当院では3分粥・5分粥・7分粥・全粥と分類しておりますが、3~7分粥までは主に外科疾患や腹部症状に合わせて提供することが多いです。また、特に噛む力や噛んだ食べ物をすりつぶす力が低下している方に全粥を選定することが多いです。
▲3分粥
▲5分粥
▲7分粥
▲全粥
4つ目はムース粥です。この記事を読んでいる方からすると「なんだそれは」と思われる方が多いかと思われますが、こちらはなんとムース状にした主食となっております。
作り方は至ってシンプルで、全粥にスベラカーゼというムース状にまとめてくれる粉を入れてミキサーで混ぜると出来上がります。
主に噛む力やすりつぶす力、飲み込む力が著しく低下している方に対して提供しております。
みなさんは粥を食べている時に、時間が経つとシャバシャバになっていたことはありませんか?それを離水というのですが、嚥下機能が低下している方はその離水した粥でむせ込みや誤嚥を招く事があります。
このムース粥は離水することなく安全に食べられる形態です。
▲ムース粥
5つ目は重湯です。粥を作る過程で出来る上澄みの部分を重湯と言い、流動食の主食ではこの重湯を提供しております。
米粒が一切含まれていないため、こちらも外科疾患や腹部症状に合わせて提供することが多い主食です。
▲重湯
このように、当院でご用意している主食の種類にはたくさんの種類があります。
患者様の全身状態や嚥下機能に応じて、適切な食形態を選定しご提供しております。
それでは、今回のお話はここまでです。
2022年10月17日寝たきりにならないために—大腿骨頚部骨折のリハビリテーション
みなさん、こんにちは。整形外科チームです。
今回は大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)について、当院での取り組みを紹介します。
大腿骨頚部骨折って?
大腿骨(股関節)内側にある頚部と呼ばれる部分の骨折をいいます。
大腿骨頚部骨折の原因は?
加齢に伴い筋力、バランス機能が低下し転倒しやすくなると言われています。
また、大腿骨の頚部はその形状から、転倒の際に外力が集中しやすく骨折が起こりやすい部位です。
加齢による女性ホルモンの低下、カルシウムを吸収する能力の低下が骨密度の減少の原因となります(骨粗鬆症は女性に多く、女性ホルモンの低下が起因していると言われています)。
カルシウムやビタミンなどの摂取不足、日光不足(日に当たらない)、運動不足や喫煙、アルコールの過剰摂取も原因となります。
例えば、骨粗鬆症があると尻もちをついただけで骨折となる場合もあります。
治療方法は?
原則は手術が適応となります。
骨折の程度により骨接合術または人工骨頭置換術のどちらかを選択します(例外的に保存療法を選択することもあります)。
骨の表面には折れた骨を修復するために重要な外骨膜という組織があります。しかし、頚部にはそれがありません!
骨の構造、血管流的に骨が付くのに不利な場所、通常の骨癒合がしにくいのです。
また、大腿骨頚部には血管が通っており、骨頭部に栄養を送っています。
骨折により血管が損傷すると血流が悪くなり骨頭部分の壊死がおきます。
つまり、大腿骨頚部骨折は手術とその後のリハビリがとても重要となる疾患なのです。
寝たきりにならないための、リハビリテーション
大腿骨頚部骨折は、高齢の方に多く、受傷後は疼痛や歩行能力の低下から寝たきり、閉じこもりとなるケースもあります。
寝たきり、閉じこもりになると認知症の発症、肺炎、褥瘡などの合併症につながることもあります。
そうならないために!!!
当院では手術前後でリハビリの介入をしています。
術後のリハビリスケジュールの説明と合併症の予防に努めています。
術直後は体調に合わせて体を起こしていきます。
術翌日より介入を開始します。主治医からの指示内容によりますが、人工骨頭置換術の場合は翌日より「歩行」の許可が出ます。
高齢の患者さんの場合は、リハビリに気が進まない時もあり、そんな時は「ちょっとトイレに行きましょう」「散歩に行きませんか?」など、違うことで声をかけて、少しでも動いてもらうようにしています。
声を掛けるスタッフを変えたり、看護師さんに声掛けしてもらうと患者さんの気持ちが向くことがあり、患者さんのやる気が高まるよう病棟スタッフ皆で働きかけています。
順調に進めば3週間程度で自宅に退院されます。
その際は自主トレーニングの指導や、退院後は外来リハビリテーション、訪問リハビリテーションの案内も可能です。また、自宅に退院するまでにもう少しリハビリが必要な方は、近隣のリハビリテーション病院へ案内しています。
以上、整形チームでした!
2022年9月2日熱中症のリスクと予防について
地球温暖化の影響でしょうか。都市部の夏の平均気温が上昇し、熱中症、脱水症、横紋筋融解症で緊急入院となる方が当院でも増えています。
「横紋筋融解症(おうもんきんゆうかいしょう)」はあまり聞き慣れない病気かと思います。真夏日/猛暑日が続くこの時期に、熱中症、脱水症と合わせて起こりやすい病気です。体温調節機能が破綻し、身体の深部温度が40℃を超えると筋細胞が変性して壊れ、症状として筋肉痛、筋力低下、脱力、麻痺、ミオグロビン尿(赤褐色尿)が生じます。脱水症状があるとさらに筋肉が損傷しやすい状態となります。さらに進行すると腎不全となります。
脱力や麻痺が継続すると寝たきりとなってしまいます。体の炎症が治まり次第、なるべく早い段階でリハビリを開始することが大事です。ベッドから起き上がったり、座った状態で出来る手足の運動を行ったりすることから始め、その後に歩く練習をして、入院前となるべく同じ状態で退院して頂くように当院では努めています。指先の痺れや力の入りにくさがある場合も作業療法士が状態を評価し、リハビリをしております。
暑さ指数(WBGT)とは
熱中症を引き起こす条件には、気温が高い、日差しが強いなどの環境条件のほか、乳幼児や高齢者、暑さに慣れていないなどの体の条件、長時間の屋外作業などの行動条件があります。これらの条件の下で、体から熱が放出されにくくなることで熱中症が発生しやすくなります。
外出や運動頻度が多い方は、より環境条件に気をつけて行動する必要があります。その指標として暑さ指数(WBGT)というものがあります。
暑さ指数(WBGT)とは、体と外気との熱のやり取り(熱収支)に与える影響の大きい「気温」「湿度」「日射・放射」「風」の要素をもとに算出された指標です(単位は気温と同じ摂氏度[℃]で表しますが、その数値は気温とは異なります)。熱中症リスクを判断する数値として、運動時や作業時だけでなく、日常生活での指標としても活用されます。
日本生気象学会では「日常生活に関する指針」、公益財団法人日本スポーツ協会では「熱中症予防運動指針」を出しています。
どちらも暑さ指数(WBGT)が28℃以上(厳重警戒)になると熱中症リスクが高まります。
ただ28℃未満の場合でも運動や激しい作業をする場合は定期的に休憩を取り、積極的に水分や塩分を補給するなどの対策をとるようにしましょう。
関連リンク:熱中症の原因・なりやすい環境や暑さ指数(WBGT)について知ろう | 熱中症ゼロへ – 日本気象協会推進 (netsuzero.jp)
体温の上昇に気をつけましょう
人間の体は体温を一定に保とうとして、体温上昇時には体熱放散作用が働き体温を下げようとします。
体熱放散作用には・・・
①皮膚の血管拡張や血流量の増加による熱の放散
②発汗による水分蒸発作用
③呼吸の促進
などがあります。
マスク着用した状態でジョギングした場合は「呼吸障害」を起こしやすいです。
マスク着用していない場合と比べて心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体温が上昇するなど体に負担がかかることや、口腔内の渇きを感じにくいため注意が必要です。
他にも・・・
- 唇やのどが渇いてきたな、と感じたらコップ半分程度の水を飲みましょう。
- たくさんの汗をかいたときには、汗で失われたミネラルを補うためにスポーツドリンクなどで塩分や糖分を取りましょう。
- 衣服の襟元や袖口などに適度にゆとりのある衣類を着用しましょう。
- 窓に日射断熱フィルムを使用したり、すだれで日よけをしましょう。
- 運動は朝や夕方の涼しい時間帯で行うようにしましょう。
気象庁で発表している暑さ指数(WBGT)も参考にしてください。暑さ指数が28℃を超えると熱中症になる方が多くなるといわれています。
出典:『公益社団法人日本理学療法士協会 理学療法ハンドブック シリーズ14在宅での危険予防』
*心臓にご病気があり主治医より塩分、糖分制限がある方は摂取し過ぎないよう注意しましょう。
当院ではリハビリ室、患者さんのお部屋の窓を開け換気を行いつつ、冷房や空調を適宜調整しコロナ対策をしながらリハビリを実施しています。
みなさんも引き続きコロナ対策と熱中症対策をしながら、健康的な生活を送って頂けたらと思います。
2022年8月10日ばね指には「ストレッチ」が有効です
みなさん、こんにちは。作業療法チームです!
当院は手外科センターを併設しており、手の怪我や疾患をもつ患者さんに対して治療を行っています。
私たち作業療法士は、医師とコミュニケーションを図り、患者さんにあったリハビリテーションを提供しています。
突然ですが、ばね指というものをご存知でしょうか? 今回は、当院に来院される患者さんにも多い、ばね指について紹介していきたいと思います。
ばね指とは
指の関節部における、腱と腱鞘(腱の通りをよくするトンネル)との間に生じた腱鞘炎のことです。
40代~50代に発生し、男性より女性に多く発症します。特に日常的に手指をよく使う人、中でも、親指と中指に発症しやすいと言われています。
手のひら側の指の付け根に小さな腫瘤を触れ、圧痛が出現します。
症状が悪化すると、指を曲げて伸ばそうすると、伸びないもしくは、ばねの様に引っかかるといった症状が出現します。
▼動画はこちら
一般的な治療法としてはステロイド注射が挙げられ、症状が改善しない場合は手術にて腱鞘を切開することもあります。過度に使用せず、安静にすることも大切です。また、ストレッチも有効とされており、今回はみなさんでも簡単にできるストレッチの方法をご紹介します。
①屈筋腱ストレッチ
②腱鞘(A1 pulley)ストレッチ
~手のリハビリに関して、今後もOTチームは頑張ります!~
2022年6月28日起き上がり介助方法のポイント
こんにちは。訪問リハビリテーション室です。
訪問リハビリでご自宅に伺っていると、利用者様のご家族様から「どこをもって体を起こしたらいいか」や「歩くときにはどのように手伝えばいいか」 といった“体位変換や移動などの介助方法”について質問されることがあります。
22年3月のリハビリ室ブログでは“ベッド上で移動させる際のポイント”をご紹介しました。
今回は”起き上がり介助方法”の ポイントをご紹介いたします。
~基本編~
▼動画はこちら
~応用編 体格差がある場合~
▼動画はこちら
起き上がり介助をするときのポイントは“円を描くように動かす”ことです。
また、座った後の後方転倒やベッドからずり落ちてしまうことも多いので、姿勢が安定するまで介助するように心がけてください。
以上、訪問リハビリテーション室でした。
2022年5月31日食事介助の重要性を伝える研修
みなさんこんにちは。言語聴覚士(Speech Therapist,以下ST)チームです。
ゴールデンウィークも終わり、新入職の方も徐々に仕事に慣れ始めてきた頃だと思います。当院では新入職者に対して、職種・部署の垣根を越えた研修にも参加してもらい、広い知識を習得する機会を設けております。今回、STは新人看護師向けに「食事介助」についての研修を行ったので、その内容についてご説明させていただきます。
以前、STのブログでも紹介しましたが、私達は言葉のリハビリ(失語症に対する訓練や発声訓練など)だけではなく飲み込みのリハビリ(摂食嚥下訓練)も行っています。昼食時の介助はSTが行えますが、それ以外の時間は基本的に病棟の看護師に依頼をしています。そのため、食事介助は看護師にとっても必要なスキルであり、毎年、研修を開催しております。
まずは座学にて摂食嚥下機能や食事介助の知識について講義を行い、理解を深めました。
その後すぐに患者さんへ食事介助を行うのではなく、実技として一度看護師同士で実際に食べ物を使用し介助をし合いました。
適切な姿勢として首を軽く前に倒して水を飲むことや、誤嚥しやすい食べ方としてゼリーを噛まずに飲み込んでみるといったことを体験してもらうことで、患者さん自身の気持ちを理解しやすく、食事介助の重要性をより実感できたのではないかと思われます。
そして講義と実技が修了したのち、実際に患者様の食事介助を見学・実施してもらいました。初めて患者さんに対して食事介助をすることに緊張をしている様子はありましたが、皆さん一生懸命に取り組んでいました。介助後に感想を聞くと、講義で学んだ通りにうまくできない場面もあり、食事介助の難しさを体感したようです。
患者さんが安全に食事をできるように、STは日々食事介助の技術を磨いております。今回の研修だけでなく当院の医療従事者に対しても、摂食嚥下機能の知識や食事介助方法を伝達し、患者さんにとって安全な食事となるようにサポートしていきます。
2022年4月30日意外と知らない? 杖の使い方
みなさん、こんにちは。
「転ばぬ先の・・」などと言われる杖ですが、正しい使い方をご存じでしょうか?
短すぎる/長すぎる杖を使用してぎこちなく歩いている方を見かけることもあれば、「杖は痛い足と同じ側に持つものだと思っていた!」と言われることもあります。
せっかく杖を使用するなら、正しく・安全に 使用していただきたいという思いから、今月は杖の使い方を紹介していきます。
杖には様々な種類(松葉杖など)がありますが、今回はT字杖を紹介します(図1)。
図1 T字杖
杖先ゴムがすり減っていませんか?
すり減ったまま使用すると杖を着いた時に滑ってしまうなど、転倒につながるので危険です。
杖を販売している店には杖先のゴムがあると思いますので、すり減ってしまう前に交換しましょう。
杖の長さは、立った姿勢でおおよそ足の長さ、杖を床に着いた時に肘が軽く曲がる程度が良いと言われています。また、杖は痛みや麻痺がある足と反対の手で持ちます(図2)。
*円背(猫背)が強い方など、原則通りの長さでは具合が悪い場合もありますので、その際はかかりつけ医や理学療法士にご相談ください。
- 〇 杖の長さは足の長さ(股関節~かかとまでの長さ)
- 〇 杖を持つ手は、痛みや麻痺がある足と反対の手
図2 杖の長さと杖を持つ手
杖の持ち手の形にもよりますが、一般的な杖の持ち方(図3)、間違った杖の持ち方(図4)は以下の通りです。
図3 正しい持ち方 | 図4 間違った持ち方 |
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→適切に力が伝わらず、杖を着いた時に不安定になり、転倒リスクにつながります。 |
“杖”と“痛みや麻痺のある足”を同時に着いて歩きます(動画参照)。
杖を持つ手が逆になると、ロボットのような歩き方になるので注意しましょう。
杖を使う際にはぜひこれらを意識してみてください。
ただし、以下のような場合は杖を持つ手にこだわりすぎなくてもよいかもしれません。
- 杖がなくても歩けるけれど念のため持って出かける場合
- 利き手と逆の手で杖を使用すると余計にふらついて危ない場合
- 杖を持つ手や肘、肩などに痛みがある場合など
効果的に杖を使用し、ぜひ“転ばぬ先の杖”として活用してください。
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